終章 裁判とメディア

 

 佐藤修一はトリカブトの毒で死んだのではなく利根川で溺死した。「渡辺荘事件」の壮大なストーリーは、武まゆみの記憶の闇が生み出したファンタジーである。森田昭はアルコールに依存した生活に起因する感染症で亡くなった可能性が高い。川村富士美にはそもそも傷害と呼べるものがなかった。「風邪薬を凶器とした前代未聞の殺人事件」も、死刑の脅迫に屈した武まゆみの作話であった。さいたま地方裁判所第2刑事部が八木茂に下した死刑判決は誤判である。

 なぜ裁判官は誤まったのだろうか。この問題を突き詰めていくと、日本の刑事司法全体が抱える問題に行き当たる。ある意味ではこの誤判は起こるべくして起こったと言えなくもない。しかし、それだけではなく、この国の犯罪報道のあり方の問題もかかわっているような気がしてならない。これらはいずれも大きなテーマであり、われわれが論じ尽くせるものではない。最後にこの事件とのかかわりのなかでわれわれが痛感した幾つかの点を指摘して、本書のまとめに代えたい。

 

itsuwarinokioku_line

Comments are closed