【不定期連載】 絡み合う3本の糸⑤(ニチイのレシート その4)

 

森田さんの供述は,アナリエさんにもぶつけられています。アナリエさんの供述について見てみましょう。前回お話したとおり,森田さんの供述は,11月2日に完成します。アナリエさんについては,11月6日から11月18日にかけて集中的に上申書が作られている期間があります。その中の11月8日の上申書で,6月1日に別荘へ行ったという話しが登場します。しかし,この時点では,「ニチイ」とか「買物」などという話は一切登場していません。

 

6月1日別荘へ行きました。そこで話したのは,6月3日にディナーショーに行く,別荘へ行く,という話しです。(アナリエH12/11/8上申書)

 

11月16日の警察官による取調べの中で,ようやく,「買物」の話が登場します。

その日,つまり6月3日は,すでに私とマミで昼間買い物に出かけることになっていたのです。(アナリエH12/11/16警察官調書)

 

その後も捜査官は,森田さんの供述をアナリエさんにぶつけてみましたが,アナリエさんの供述は,全く進化しませんでした。11月18日の時点では,アナリエさんは次のように話しているだけです。

今後は嘘をつこうという気持ちはありませんが,まだまだ思いださないこともありますので,聞かれたことについては,当時のことをよく思い出して正直に答えたいと思います。
あとマスターが言ったことは,「昼間はアンナひとりでいないで,マミとアンナで買物に行け」ということです。
マミとアンナで買物に行けというのは,私はしょっちゅうマスターの言うことを聞かないので,マミを付けておけば安心だと思ってそう言ったと思います。(アナリエH12/11/18警察官調書)

 

森田さんの供述によると,武さんとアナリエさんがニチイに行って買い物をして,そこでレシートをもらって取っておくということは,アリバイ工作として位置づけられていることになります。アナリエさんは,八木さんから,昼間のうちに武さんと一緒に買い物に行けと言われたと供述してはいますが,その意味については,アリバイ工作とは全く別の意味に理解しているようです。

 

捜査官側は,これではらちがあかないと考え,警察官による取調べをあきらめ,検察官がアナリエさんを取り調べることになりました。ここで,アナリエさんは,検察官に一喝されたのでしょう。11月19日,検察官によって,「もう嘘は言いません」という供述調書が作成されました。それをきっかけに,アナリエさんは,別荘謀議に関し,ようやく詳細な供述を始めました。

八木さんは,「アンナは,3日の昼間アパートで待っててどこも行かないで。それからまみちゃんと一緒に買い物に行って,その後アパートに行ってあんぱんを食べさせて」とも言いました。八木さんがこのようにまみちゃんと一緒に行動するように命じた理由は,私が思うに,八木さんは,まみちゃんがあんぱんを食べさせる時に私が渡辺アパートにいないと困ると思ったからだと思いました。
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そして,6月3日当日の昼間,私は,東秩父で八木さんに指示されたことに従って,渡辺荘でおとなしくしており,その後迎えに来てくれたまみちゃんとニチイに買い物に行き,まみちゃんが私を佐藤さんがいる渡辺アパートに送ってくれました。(アナリエH12/11/20検察官調書)

 

ここで,アナリエさんの供述が一応完成しました。もっとも,アナリエさんの供述の中には,レシートの話は一切出てきていません。

(つづく)

                        鍜治伸明

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