武ノートとは何か

 現在、不定期連載「絡み合う3本の糸」をブログからウェブサイトに移動させていますが、その中でしばしば「武ノート」という単語が出てきます。

 これは、偽計、死刑の威嚇、無期懲役の約束、弁護活動妨害などの極限的な違法取調べにより、偽りの記憶を植え付けられ、虚偽自白に追い込まれた武まゆみさんが、取り調べ中の体験を克明に記録したノートのことです。

 公判で証拠採用された日記は平成12年4月16日から平成14年1月12日までのもので、大学ノート10冊分になります。

武ノート①の表紙

武ノート①の表紙

武ノート②の表紙

武ノート②の表紙

 

 

 

 

 

 

 

 例えば、一冊目の冒頭の取調べの内容はこんな感じです。

武ノート平成12年4月20日

武ノート平成12年4月20日

4月20日(木)検察庁にて

PM1:40~ PM11:00

 

「何も話したくありません」と私は言った。 検事は、そんなこと言ってると不利になるぞ、といってから八木さんの話をした。 (中略) あんたは相手にされていないから別れたほうがいいとか言っていた。八木が、あんたのこと何ていってるか知ってるか?別れるしかないと、さんざん言っていた。このままいくとあんたが中心人物ということになる。八木には逃げ道があるとも言ってた。

 

死刑の話、無期の話「このままでいくとそうなると思う」とか言っていた。

 

あと、佐藤さんは水死、川本さんは首つり、森田さんは病死と言って、森田さんのことは、後から「薬害になる」と言い直した。周りに死人が多いと言われた。

 

「私がもう話は聞かないと言ったらあんたはもう終わりだ。助かる道はない。」と何度も言われた。私はだまって聞いていた。

 

あと「弁護士はこちらがどういう証こをもってるか知らないから、あんたの言ってることを真に受けてるんだろう」とも言っていた。

 

 黙秘権侵害(話したくありませんなんて言っていると不利になるぞ)、切り違え(八木が、あんたのこと何ていってるか知ってるか?別れるしかないと、さんざん言っていた。)、偽計(このままいくとあんたが中心人物ということになる。八木には逃げ道がある)、死刑の威嚇(このままでいくとそう(死刑に)なると思う・私が話を聞かないと言ったらあなたはもう終わり。助かる道はない)、弁護権侵害(弁護士はこちらがどういう証拠を持ってるか知らないから、あんたの言うことを真に受ける)と、刑事訴訟法の基礎的な教科書に出てくるような違法取調べが、1日の取調べで全て盛り込まれています。

 1日10時間を超えるこのような取調べが、「自白」をするまで延々と続くのです。このような取り調べを受ける人の精神状態を、日常的な感覚で推し量ることはできません。武さんが「自白」に至った精神状態を知るには専門家の助けが必要です。それが仲先生の鑑定です。仲先生は、武さんの「自白」は典型的な偽りの記憶の様相を呈していると述べています。

 

 「絡み合う3本の糸」は、一級資料である武ノートを軸にしつつ、武・アナリエ・森田の膨大な調書を元に、同じテーマの「自白」がどのようにして生み出されるかを追いかけたものです。今後の連載にご期待ください。

 

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