一審判決(抄)

 

第七 総合感冒薬の生命に対する危険性

 

一 関係証拠によると,各薬剤の主たる含有成分,15歳以上の者についての用法・用量は,以下のとおりと認められる。

1 解熱鎮痛剤イブA錠については,2錠中,イブプロフェン150ミリグラムなどで,その用法・用量は,1日3回,1回2錠。

2 総合感冒薬新ルルA錠については,9錠中,アセトアミノフェン900ミリグラム,ノスカピン36ミリグラム,リン酸ジヒドロコデイン24ミリグラム,フマル酸クレマスチン1.34ミリグラムなどで,その用法・用量は1日3回,1回3錠。

3 総合感冒薬プレコール持続性錠については,3錠中,アセトアミノフェン225ミリグラム,イソプロピルアンチピリン150ミリグラム,リン酸ジヒドロコデイン9ミリグラムなどで,その用法・用量は1日2回,1回3錠。

4 消炎・鎮痛・解熱剤ブルファニックについては,1錠中,イブプロフェンのみ100ミリグラムで,その用法・用量は1日3回,1回2錠。

5 感冒薬パブロンS錠については,3錠中,アセトアミノフェン300ミリグラム,塩酸ブロムヘキシン4ミリグラム,リン酸ジヒドロコデイン8ミリグラムなどで,その用法・用量は1日3回,1回3錠。

 

二 そして,これらの薬剤の成分中,解熱鎮痛剤であるアセトアミノフェンについては,アスピリンに比較して安全性が高いため,総合感冒薬における配合量が比較的多く,事故例,臨床例が豊富に集積されている薬剤であるところ,極量は1回1グラムで1日3グラム,最小中毒量は成人で5ないし15グラム,肝障害発現量は7.5グラム以上(150ミリグラム/キログラム以上。250ミリグラム/キログラムで50パーセント,300ミリグラム/キログラムでほぼ100パーセント発現),ヒト経口致死量は成人13ないし25グラムとされており,これを過剰に摂取すると,下痢,胃痛,胃・十二指腸のびらんや嘔気・嘔吐,食欲不振から,やがて黄疸,肝障害を発現し,肝壊死を引き起こして重篤な劇症肝炎等に至る危険性があり,最悪の場合,肝不全により死亡する危険性もあること,さらに,アセトアミノフェンを摂取した場合の副作用として,まれに(0.1パーセント未満)好中球の減少を起こすことがあるとされているところ,好中球の減少がすると,細菌感染に対する抵抗力が減少し,容易に細菌感染を引き起こして,死の危険と直面する可能性があること,イブプロフェンについては,アセトアミノフェンと同様,多量に摂取すると,肝障害や好中球の減少を起こすほか,常用量の服用でも,胃粘膜及び消化管障害による食欲不振,嘔気・嘔吐,胃部不快感,腹痛,下痢等が起こること,イソプロピルアンチピリンについては,再生不良性貧血,無顆粒細胞症などの血液障害や肝臓・腎臓に対する副作用があるほか,胃痛,食欲不振,嘔気・嘔吐,下痢等の消化器障害を起こすことがあることなどが関係証拠によって認められる。

ところで,前記福室憲治の当公判廷における証言及び捜査関係事項照会回答書等によると,これらの成分を複数含有する配合剤を服用した場合,各成分間の相互作用により副作用が増幅される危険があり,したがって,例えば,新ルルA錠とプレコール持続性錠を併用すると,その成分であるアセトアミノフェンとイソプロピルアンチピリンの相互作用により肝障害が発生する危険性が増加し,新ルルA錠とイブA錠やブルファニックなどを併用すれば,それらの成分であるアセトアミノフェンとイブプロフェンの副作用により,肝障害のほか,好中球の減少から無好中球症や再生不良性貧血などの血液障害を引き起こす危険性が一層高まることが推認されること,既に,肝臓や腎臓に障害を有している状態で,通常の用量の薬剤を繰り返し投与すると,肝臓での代謝の遅れや腎臓からの排泄の遅れにより,薬物が体内に蓄積し,過量投与したのと同様の副作用や中毒が発現すること,これらの配合剤を大量(常用量の2倍以上)に長期間連用(添付文書に記載された服用注意期間を超えて服用する場合,概ね2週間以上)した場合には,薬物の有効血中濃度域を超えて毒性発現域に到達したり,副作用による障害の遷延化,悪化を招くことなどが認められる。

 

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