一審判決(抄)

 

第三 川村富士美事件の発覚の経緯

 

一 関係証拠によると,川村富士美に関する事件が発覚したのは,次のような経緯であると認められる。すなわち,平成11年5月30日午前3時ころ,本庄市内の吉沢病院から,「パジャマ姿の川村と名乗る男性が「だれかに追われている」等意味不明の言動をし,助けを求めている」旨の通報があり,警察官が急行したところ,男性は,両腕を内側に硬直させ,全身を震えさせながら,「だれかが追ってくる。」とか,「警察に連れて行ってくれ。」などと述べたため,警察官は,同日午前3時7分ころ,本庄警察署に任意同行して更に事情を聴取したところ,男性が,「マミーのママでタケマユミから薬を飲まされて,体がしびれている。医者に連れて行ってくれ。一緒にヤギもいて,みんなグルになって薬を飲まされた。」と述べて保護を求めたので,直ちに深谷赤十字病院に同行して診察を求めたところ,入院治療の必要があると診断された。入院時点における川村の身長は159センチメートルであるところ,これに対して体重は44キログラムと痩せており,入院後,血液を採取して検査したところ,GOT等の肝機能の数値が正常値よりも高く,軽度の貧血等の症状が見られたが,B型肝炎,C型肝炎等のウィルス性の可能性はなく,その後,同病院で取り寄せた同9年11月と同10年10月の同人の検査結果においては肝機能の数値に特段の以上が認められなかったことから,同月以降,深谷赤十字病院に入院するまでの間に,その数値に変動を来したものであろうことなどが判明した。

そして,前記北村聖の証言等によると,上記入院期間を挟む同8年6月から同11年11月にかけて川村から採取した各血液から得られた生化学データ等を分析した結果,川村には,上記入院の時点において,軽度の栄養障害があり,それぞれ薬物性と推定される中程度の旧姓肝障害,軽度の貧血,異常値とはいえないものの好中球の減少と推定される白血球の減少が認められること,その時点の症状としては,生命が危ぶまれるような状態ではないが,薬物の摂取がより増加したり,期間がより長引いたりすると,肝障害や貧血等の障害をより悪化させ,好中球の減少が進むことが予想される状況にあったことが認められる。

二 以上の認定に対し,まず,弁護人は,入院時点において,川村が薬物性の急性肝障害や肝機能障害を起こした状態にあったことは認められないと主張するが,上記北村証言等によると,入院前後の川村のGOT,GPT,LDH,v-GTPの数値のレベルやそれぞれの数値の変動状況,さらにはそれらが特別の治療もなく基準値内に戻っていることなどから,川村は薬物性の中程度の急性肝障害と判断されるというのであって,この判断に特段疑義を容れる余地はない。

三 また,弁護人は,薬物の影響により,川村が貧血を起こしていたとか,好中球が減少し,これによって健康状態を悪化させていたなどということは証明されていないと主張するが,上記北村証言等によると,HCB(ヘモグロビン)の数値がやや低下しており,軽度の貧血に該当するが,MCHC(平均赤血球色素濃度)やMCV(平均赤血球容積)などの数値の状況及びその他の身体状況などを勘案すると,その原因は薬物性とみるのが合理的であるというのであり,また,川村の血液像の検査結果では,入院前から10日間くらい白血球の数値が落ち込んでおり,その理由は白血球中野最大の分画である好中球の減少によるものと考えられるが,川村の身体状況や10日間程度の入院で特別の治療もなく白血球の数値などが平常値に戻っていることなどに照らすと,その原因は薬物性とみるのが合理的であるというのであって,川村が,軽度の薬物性の貧血の状態にあり,且つ,薬物の影響により好中球の減少を起こし,平常時に比べれば,細菌感染に対する抵抗力が減少した状態にあったことは明らかというべきである。

 

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