一審判決(抄)

第二 關の死体から採取された血液,毛髪等の鑑定結果

 

一 関係証拠によると,解剖の際,關の死体から,胃内容物,心臓内血液,末梢部血液等が採取され,これらの資料について,さらにそこに含まれる薬物成分等の鑑定が行われた。その結果は,科捜研において鑑定した胃内容物,心臓内血液,末梢部血液からそれぞれアセトアミノフェンが検出されており,また,毛髪については,平成11年8月11日に關の遺体から採取されたものについて,前記中原ゆうじが,資料を概ね成人の1か月の成長部分に該当する1.2センチメートルごとの7分画にしてして分析した結果,同年5月後半ころに相当する分画からさかのぼって同10年11月後半以前ころに相当する分画に至るまでのすべての部分からアセトアミノフェンとイソプロピルアンチピリンが,同11年5月後半ころに相当する分画にイブプロフェンとジヒドロコデインが,どの時期の分画から検出したものか特定はできないが,クレマスチンとその代謝物であるカルビノールが,それぞれ検出されたことが認められる。さらに,最も毛根に近い部分の1.2センチメートルの分画について,これを2分にしてアセトアミノフェンn濃度を調べたところ,先端側の同11年4月後半から同年5月中旬に相当する部分は根本側の同年5月中旬から同月後半に相当する部分の2倍以上の濃度のアセトアミノフェンを検出した。

したがって,關は死亡直前にもアセトアミノフェンを含有する薬物を摂取したばかりか(これを更に細かくみれば,死亡直前の2週間はそれ以前の2週間に比べて摂取量は減少していたものとみられる。),死亡のときからさかのぼって数か月間にわたり,アセトアミノフェン,イソプロピルアンチピリン,ジヒドロコデイン,イブプロフェン,クレマスチンを含有する薬物を継続的に摂取しており,殊にアセトアミノフェンについては,毛髪中の濃度がかなりの高濃度であることから,大量のアセトアミノフェン薬剤を長期間にわたって摂取していたものであることが確認されることとなる。

二 以上の認定につき,弁護人は,死体の保管状況や,鑑定用の資料を採取した経緯が明らかにされていないから,上記鑑定結果は本件の証拠としての関連性を欠くと主張するが,関係証拠を精査しても,鑑定に至る経緯や鑑定資料の同一性の確認の点などについて特段の疑義は見出せないのであって,上記鑑定結果が本件の証拠として関連性を有することは明らかといわなければならない。

三 弁護人はまた,關の毛髪を鑑定した中原作成の鑑定書は,鑑定の経過を記した書面とはいえないので,証拠能力・証明力がなく,毛髪中の薬物の濃度を鑑定したところで,摂取した薬物自体の濃度や,その使用時期を特定することはできないと主張する。

しかしながら,関係証拠を総合すると,毛髪鑑定自体は,明確な科学的根拠に基づくものということができる上,本件鑑定は,この分野に関する多数の鑑定経験を有する鑑定人が行ったものであるから,その信用性は十分であって,その証拠能力,証明力に疑義を容れる余地はない。弁護人は,また,汚染のないことを示す上で肝心なブランクテストのデータが添付されていないとか,検量線などの定量分析に関する資料が全く添付されていないとか,鑑定資料である毛髪が全量消費されており,鑑定の正確さを科学的に検証することができないなどと主張してその信用性を争うが,中原の当公判廷における証言その他の関係証拠によると,本件の鑑定の過程において資料の汚染が発生しないよう慎重に配慮されていたことが明らかであり,ブランクテストのデータや定量分析に関する資料が書けていること及び鑑定資料を全量消費したことなどが,中原鑑定の信用性を損ねるものとも考えられないから,弁護人の主張は失当というほかない。

四 弁護人はまた,アセトアミノフェンが毛髪中の多くの分画に高濃度で検出されたからといって,關がアセトアミノフェン薬剤を大量にかつ長期間にわたって連用していたことの証明となるものではないと主張するが,上記中原証人は,アセトアミノフェンの毛髪中への移行率について,動物実験を踏まえて検討した結果,非常に低いとした上で,実際に検出された濃度を元にして証言しているのであって,信頼するに足りるものということができる。

 

 

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