第12章 1日25錠の風邪薬を毎日飲んだら人は死ぬか

風邪薬とアルコールの併用

 

判決は、アセトアミノフェンには肝障害や好中球減少などの症状を来たす危険があるし、アルコールについても同様の危険があるから、この2つを併用すると、肝障害や好中球減少が発生する危険性がさらに増すのだという。具体的には、次のように述べている。

関係証拠によれば、アセトアミノフェンをアルコールとともに摂取すると、アルコールによりアセトアミノフェンの代謝酵素が誘導され、中間的毒性代謝物の産生量が増大するため、アセトアミノフェン自体の摂取量が「極量」に達していなくても、重篤な肝障害を生ずることがあり得る。

しかし、いくつかの研究の成果をみると、必ずしも、判決のように断言できるとは思えない。Rumackらは、アセトアミノフェンを過量投与した患者662例について検討したが、慢性的アルコール乱用の有無により患者間で肝毒性について一貫した相違はないという結論に達した。また、Readらは、1982年~1983年にKing’s College病院で治療した247例の患者の臨床経過と転帰を調査したが、飲酒歴と不良な予後との間に関連性は見つからなかった。これらの患者のうち4例は血清中アセトアミノフェン濃度が非毒性範囲内であったにもかかわらず、肝毒性を発症していたが、慢性飲酒歴を有していたのは、これら4例中1例のみであり、アセトアミノフェンの肝毒性に対する感受性の増加は慢性飲酒以外の状況に依存する可能性があるという結論に至った(Whitcomb,et.al. 1994)。

われわれはこの研究論文も訳文をつけて証拠として提出した。それにもかかわらず裁判官たちは、この論文にまったく触れることもなく、先に引用したような断定をした。これはフェアな態度とはとうていいえないだろう。いずれにしても、森田も川村も「重篤な肝障害」など全然発症していない。森田は胸膜炎と肺炎で死亡したのであり、川村の肝機能はほとんど正常だったのである。

 

Comments are closed