第10章 森田昭の死因

 

アセトアミノフェンは、優れた解熱鎮痛薬であり、総合感冒薬や鎮痛薬の主成分として一般用医薬品にも配合され、わが国でも広く使用されている。一般的には、アセトアミノフェンの1日常用処方量では肝障害を来さず、長期間服薬しなければ安全に使用できるとされているが、過剰に服用すると中毒性肝障害を生じることがある。また、常用量でも肝障害を起こすことがあり、最近中毒症例の報告がなされている。

しかし、森田昭の死因は、急性肝障害ではない。森田昭を解剖した齋藤が、低栄養状態に伴う化膿性胸膜炎・肺炎であると鑑定している。

森田事件の訴因は、八木らが共謀して、森田に対し、殺意をもって、反復継続してアセトアミノフェン等を含有する総合感冒薬等及び高濃度のアルコールを含有する飲料を多量に嚥下、飲用させるなどし、よって、感冒薬等の過量長期連用による副作用等によって好中球の減少及び低栄養状態による抵抗力の低下を惹起させ、これに伴う化膿性胸膜炎、肺炎等により死亡させて殺害したというものである。

被告人に有罪の判決を下すためには、被告人の行為によって結果が発生したことを明らかにしなければならない。これを、因果関係という。検察官は、この因果関係を合理的な疑いを超えて証明する義務がある。それができなければ、裁判所は、被告人に有罪の判決を下すことはできない。それが、刑事裁判のルールである。

裁判所の認定は次のとおりである。

アセトアミノフェン等を含有する総合感冒薬等+高濃度のアルコール

好中球の減少及び低栄養状態による抵抗力の低下

化膿性胸膜炎、肺炎等

死亡

 

森田昭は、本当にさいたま地裁判決が認定した筋道をたどって死亡したのか?そのことは証明されたのか?
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