第9章 情況証拠

7 捜索チラシ

 

八木らは、佐藤の死体を捜索するために、チラシを作った。6月9日、武が八木宅で文案を書き、考子がワープロで清書した。森田考子が使用していたワープロのインクリボンの解析結果(H12/11/27捜査報告書)によると、考子が清書したチラシにはこう書かれている:

☆この人を探した人に、500万円、差し上げます。
☆平成7年6月3日土曜日の、夜から行方不明になっています。
☆服装 黒のズボン、黒い靴、黒の皮ジャンパー

 

ここに「黒のズボン」と「革ジャンパー」がはじめて登場する。しかし、最も外側に着せたはずの「セーター」は登場しない。そして、絶対に履いていないはずの「黒い靴」が記載されている。

おそらく、このチラシを作るまでの間に、佐藤の衣服のうち、革ジャンパーと黒いズボンが部屋からなくなっていることに彼らは気付いたのであろう。だから、これらをチラシに書くことができた。しかし、セーターを着ていたことは分からなかったし、靴を履いていないことなど彼らには想像できなかったのである。

ここでも「6月3日午後3時」は登場しない。「平成7年6月3日土曜日の、夜から行方不明になっています」という記述は、それまで警察や郵便局職員らに彼らが再三にわたって述べてきた内容――「午後5時に出かけたあと行方不明になった」――に沿うものである。

繰り返し言おう。彼らの間で「友達と買い物に行って午後3時に帰ったら佐藤さんはいなかったことにする」という「謀議」が繰り返されていたのならば、捜索チラシに「夜から行方不明になっています」などということは決して書かない。このチラシも謀議の不存在を明らかにしているのである。

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